井上尚弥選手のスパーリングパートナーを務めた、メキシコ人ボクサーのホセ・イスラエル・ラミレス・マシエル選手。
今回は、ラミレス選手がルイス・パーラ氏のYouTubeチャンネルで語ったインタビューをもとに、実際に拳を交えて感じた井上選手の強さや、日本のバンテージに対する印象、中谷潤人選手の評価などを紹介します。
なお、このインタビューは、井上尚弥対中谷潤人戦が行われる前に収録されたものです。
日本到着の翌日に井上尚弥とスパーリング
ラミレス選手が日本に滞在した期間は、およそ3週間半。日本に到着した翌日には、早くも井上選手と4ラウンドのスパーリングを行いました。
初めて向かい合った井上選手について、ラミレス選手は、足と手のスピード、力強さ、そして身体のコンパクトさが印象的だったと振り返っています。
身長はそれほど高く見えないものの、実際に向かい合うとパンチが遠くまで届き、動きも非常にダイナミックだったそうです。
「常に集中していなければならなかった」
ラミレス選手が特に驚いたのは、井上選手がスパーリング中に維持するペースの速さでした。
休める時間がほとんどなく、常に攻撃と防御の判断を求められるため、わずかな気の緩みも許されなかったといいます。
ラミレス選手は自身について、
「俺はボクサータイプだから、常に集中していなければならなかった」
と説明しています。
ここでいう「ボクサータイプ」とは、接近戦で激しく打ち合うファイタータイプではなく、距離や動き、技術を使って戦うスタイルを指しています。
井上選手の速い展開に対応し続けるためには、極めて高い集中力が必要だったのでしょう。
スパーリングを重ねるたびに変化する井上
ラミレス選手によると、井上選手は相手の動きや反応を読みながら、スパーリングの内容を少しずつ変えていたといいます。
同じ攻撃を繰り返すのではなく、相手がどのように反応するかを観察し、そこで得た情報を次のラウンドや次回のスパーリングに生かしていたそうです。
ラミレス選手自身も、頭を動かし、ペースを上げ、ボディーへの攻撃を増やすことで、次第に井上選手とのスパーリングに適応していきました。
それでも井上選手については、攻撃、守備、スピード、パワーのすべてが高い水準にある「あらゆる面で完成された選手」だと評価しています。
単にパンチが強いだけではなく、相手を観察し、その場で戦い方を変えられる対応力も、井上選手の大きな強みなのでしょう。
中谷潤人も危険だが、井上はより完成されている
中谷潤人選手について、ラミレス選手は、体格が大きく、優れたサウスポーであり、危険なパンチを持つ選手だと評価しています。
その一方で、選手としての総合的な完成度では、井上選手が上回っていると考えていました。
インタビューの時点では、両者が対戦した場合、井上選手が6回以降に中谷選手をストップする可能性があると予想しています。
井上選手はほぼすべてのパンチを強く打ち、その正確性とパワーが組み合わさることで、相手に大きなプレッシャーを与えるというのが理由です。
ただし、強いパンチを狙うぶん、攻撃の際に隙が生まれる場合もあると指摘しています。
井上選手が過去にダウンを喫した場面についても、攻撃に全力を注いだ瞬間に生じた隙が関係しているのではないかと分析しました。
“バム”・ロドリゲスとの相性
ラミレス選手は、ジェシー・“バム”・ロドリゲス選手と井上選手の相性についても語っています。
バム選手については、真正面から激しく前に出て、相手を押し潰すようにプレッシャーをかけるタイプだと説明しました。
そのうえで、
「正直、彼のようなタイプの相手は井上に合っていると思う」
との見方を示しています。
正面から前に出てくる相手であれば、井上選手は自ら距離を詰める必要がなく、持ち前のスピードや正確性、カウンターを生かしやすいと考えているのでしょう。
グローブを着ける前から感じたバンテージの硬さ
インタビューの中で特に興味深いのが、井上選手のバンテージに関する証言です。
ラミレス選手は、ジムでまだグローブを着けていない井上選手に挨拶した際、その拳に触れ、バンテージが非常に硬いと感じたと話しています。
ただし、ラミレス選手は不正があったと主張しているわけではありません。
本人は、日本で使用されているテープの材質が、メキシコで一般的に使われているものより硬いのではないかと推測しています。
実際に日本でテープを購入したところ、メキシコで使われているものとは感触が異なっていたそうです。
また、一緒に日本を訪れていた仲間たちの間でも、このバンテージについて話していたと明かしています。
あくまでもスパーリングの際にラミレス選手が受けた個人的な印象であり、ルール違反や不正を告発する発言ではない点には注意が必要です。
リングを離れれば気さくな人物
ラミレス選手は、井上選手のリング外での姿についても語っています。
トレーニング中は非常に真剣ですが、終われば友好的で、スパーリングパートナーたちを焼肉に招待したこともあったそうです。
世界的なスターでありながら、実際に会った井上選手は若々しく、気さくな人物だったと振り返っています。
リング上で見せる厳しさと、リングを離れたときの親しみやすさ。その両方を直接知ることができたのも、スパーリングパートナーとして長期間行動をともにしたラミレス選手ならではの経験といえるでしょう。
フェザー級でも通用する可能性
さらにラミレスは、井上が126ポンドのフェザー級へ上げた場合についても、
「井上は、まだもう一階級上げられると思う。もしかしたら、さらに強くなるかもしれない。どうなるかは分からないけどね」
と語り、フェザー級でも通用する可能性があるとの見方を示しました。
また、フェザー級の王者については、WBO王者ラファエル・“ディビノ”・エスピノサを「この階級で最も強い王者」だと評価しています。
井上がフェザー級へ進出した場合、体格差のある王者たちを相手に、どこまでその強さを発揮できるのかも注目されます。
スパーリングパートナーの証言から見えた強さ
実際に拳を交えたラミレス選手の証言から浮かび上がったのは、井上選手のパワーだけではありません。
速い展開を維持するスタミナ、相手の反応を読む観察力、スパーリングを重ねるたびに戦い方を変える対応力。そして、高い集中力を相手にも要求するほどのプレッシャー。
“モンスター”の強さは、こうした能力が高い次元で組み合わさることで生まれているのでしょう。
ラミレス選手にとっても、世界最高峰の選手と約1か月にわたってトレーニングをともにした経験は、今後のキャリアにおける大きな財産になったはずです。
今後、井上選手がフェザー級へ進出することになれば、その強さが体格差のある相手にも通用するのか、大きな注目を集めることになりそうです。
Yasu Boxing Instituteでは、YouTubeでも海外インタビューの翻訳動画を投稿しています。


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