デビッド・ピカソが井上尚弥戦を回顧「危ないとは感じなかった」ナチョ・ベリスタイン、ルイス・ネリへの本音も

デビッド・ピカソが井上尚弥戦を振り返るインタビュー記事のアイキャッチ画像 デビッド・ピカソ

2025年12月、サウジアラビア・リヤドで井上尚弥選手の世界スーパーバンタム級4団体統一王座に挑戦したデビッド・ピカソ選手。

12ラウンドを戦い抜いたものの、判定0-3で敗れ、プロ初黒星を喫しました。

その後、ピカソ選手はフェザー級へ階級を上げて再起。2026年8月29日にはマイコル・リンコン選手を破り、WBCシルバー・フェザー級王座を獲得しています。

そんなピカソ選手が、海外メディア「EL BOXGLERO」のインタビューに登場。

今回紹介したインタビュー動画はこちらです。 

井上選手と実際に12ラウンド戦って感じたことや、試合中に意識していたディフェンス、ナチョ・ベリスタイン氏から受けた厳しい評価、さらにルイス・ネリ選手との関係について語りました。

「危ないと感じた瞬間はなかった」

インタビューでは、井上選手から多くのパンチを受けたという試合後の評価についても話が及びました。

ピカソ選手によると、リング上では井上選手の強いパンチをまともにもらわないことに集中していたといいます。

そして、自身の感覚について、

「試合中、危ないと感じた瞬間は一度もなかった。効いたのはレバーへのボディー1発だけだ」

と振り返りました。

もちろん、これは試合を戦った本人の体感です。

実際の試合では井上選手が明確にポイントを重ね、判定は120-108、119-109、117-111。3者とも井上選手を支持しています。

その一方で、12ラウンドを通して井上選手と向き合ったピカソ選手が、「どのパンチが実際に効いたのか」「リング上で何を考えていたのか」を本人の言葉で語っている点は興味深いところです。

井上尚弥の「気」をどう感じたのか

インタビュアーは、井上選手と実際に対峙した際に感じたものについて、日本のアニメになぞらえて「“気”はどうだった?」と質問しています。

ピカソ選手は井上選手を高く評価しながらも、「人間であることに変わりはない」という趣旨の考えを語りました。

また、自分自身が試合のリズムをつかむまでには8〜9ラウンドほどかかったとも振り返っています。

世界トップクラスのスピードと攻撃力を持つ井上選手を相手に、まず強打をまともにもらわないことを優先したことが、ピカソ選手の試合運びにも大きく影響していたようです。

ナチョ・ベリスタインの厳しい評価に反論

今回のインタビューでは、メキシコの名伯楽ナチョ・ベリスタイン氏がピカソ選手について語った厳しい評価も取り上げられました。

これに対してピカソ選手は、ベリスタイン氏の実績や意見には敬意を示しつつ、

「誰も自分だけが正しいとは言えない」

という考えを示しています。

さらに、

「他人の身体や心のことまで決めつけることはできない」

とも語りました。

ベリスタイン氏ほどの実績を持つ人物から厳しい言葉を向けられながらも、相手そのものを否定するのではなく、「その意見が絶対的な真実ではない」という形で反論しているのが印象的です。

「ただの通過点」と呼ばれることへの違和感

インタビュアーが特に問題視したのが、ボクシングで時折使われる「単なる手続き」「ただの通過点」といった表現でした。

圧倒的な本命選手と対戦するアンダードッグについて、「勝つ可能性がない」「次の試合に進むための通過点にすぎない」と表現することがあります。

しかし、ピカソ選手はそうした見方に疑問を呈します。

リングに上がる選手が、

「自分では相手にならないから負ける」

と思って戦うことはない。

そして、ボクシングではほんの一瞬でも集中が切れれば、試合に敗れるだけでなく、命そのものが危険にさらされる可能性があると語りました。

プリチャード・コロンの事故にも言及

その流れで名前が挙がったのが、プエルトリコのボクサー、プリチャード・コロン氏です。

コロン氏は将来を期待されたプロスペクトで、2015年10月にテレル・ウィリアムズ選手と対戦した時点で、プロ16戦全勝13KOでした。 

しかし、この試合で後頭部へのパンチを繰り返し受け、試合後に倒れて病院へ搬送。脳内出血が確認され、緊急手術を受けました。

その後、長期間にわたる昏睡状態を経て重い後遺症が残り、2026年8月13日、33歳で亡くなりました。 

WBCはコロン氏の事故を受け、後頭部への危険なパンチ、いわゆる「ラビットパンチ」をなくすための啓発活動にも取り組んできました。

ピカソ選手が「ただの通過点」という表現に異を唱えた背景には、ボクシングという競技そのものが持つ危険性への認識もあります。

「もっと強い相手と戦っておくべきだったのでは?」

井上戦については、ピカソ選手自身の能力だけではなく、それまでのキャリアの積み方についても話が及びました。

インタビュアーは、ピカソ選手がキャリア最大の試合を迎えるまでに、井上選手と戦うための十分なレベルの対戦経験を積めていなかったのではないかと指摘しています。

これに対してピカソ選手は、今後のキャリアについて、

「これから40、50試合もして、その間にトップレベルではない相手と何試合も戦って、たまに大きな試合をするくらいなら、毎回強い相手と戦いたい」

という考えを語りました。

井上戦で初黒星を経験したからこそ、単純に戦績を積み上げるのではなく、より高いレベルの相手との経験を増やしたいという考えに変化しているようです。

ルイス・ネリとの対戦について「今はスポーツ的な価値を感じない」

ピカソ選手と同じメキシコ人で、以前から対戦候補として名前が挙がってきたのがルイス・ネリ選手です。

ピカソ選手によれば、もともとネリ戦を望んでいた理由は、メキシコのトップ選手同士が戦い、

「誰が井上尚弥に勝てるのか」

そして、

「誰が本当に井上に挑戦する資格があるのか」

を決めるためだったといいます。

しかし、その後ネリ選手側の発言などによって話が個人的なものになったと感じているようで、現在は以前ほどネリ戦にスポーツとしての価値を感じていないと説明しました。

実現しないのであれば、あくまでボクシングの話として終わらせればいいというスタンスも示しています。

フェザー級で再スタートしたピカソ

井上戦後、ピカソ選手はスーパーバンタム級からフェザー級へ階級を上げました。

2026年8月29日の復帰戦ではマイコル・リンコン選手を破り、WBCシルバー・フェザー級王座を獲得。

その数日後に行われたWBC恒例の「Martes de Café」では、WBC会長マウリシオ・スライマン氏から正式にベルトを受け取っています。 

「Martes de Café」は直訳すると「火曜日のコーヒー」。

WBCがメキシコで定期的に開催しているイベントで、王者や選手、プロモーター、ボクシング関係者、メディアなどが集まり、表彰や試合の発表などが行われています。 

井上戦では世界王座獲得には届かなかったピカソ選手ですが、現在は一階級上のフェザー級で再び世界王座を目指しています。

井上尚弥との12ラウンドを今後にどう生かすのか

井上尚弥選手との試合について、ピカソ選手自身が語った感覚と、実際の採点や試合内容は分けて考える必要があります。

ピカソ選手が「危ないとは感じなかった」「効いたのはレバーへの1発だけ」と振り返ったからといって、井上選手が苦戦したという意味ではありません。

一方で、井上選手と12ラウンドを戦った経験そのものは、ピカソ選手にとってこれまでのキャリアとは比較にならないほど大きなものだったはずです。

本人も今後はトップレベルの相手と積極的に戦いたいという姿勢を示しています。

フェザー級に階級を上げたピカソ選手が、井上戦で得た経験をどのように生かしていくのか。

今後の対戦相手にも注目です。

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